認知症? もう手遅れです。遺言書も書けません。
認知症になって意思能力がなくなると、意思の表明である遺言書は書けなくなります。2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。私も心配になり遺言書を書くことにしました。
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言の弱点
・全てを自筆で書くことが必要
・自分で保管するため紛失や遺族に見つけてもらえない恐れがある
・誰かに改ざんされる恐れがある
・家庭裁判所の検認が必要で無効と判断される恐れがある
公正証書遺言にはこれらの恐れが無いので、推奨されることが多い。
公正証書遺言の作成手順
- 本人が遺言内容をきめる。どのような財産があるかリストを作り、誰に何を相続させるかを決め具体的なメモを作る。
- 必要書類等を揃える。実印、印鑑証明、戸籍謄本、銀行預金通帳の写し等を準備する。
- 公証役場に予約し、打合せを行う。メモを元に遺言内容の希望を伝え、公証人に原案を作成してもらう。
- 証人を2名決めておく。友人知人に依頼するか、公証役場で手配してもらう。
- 本人、証人、公証人の都合の良い日に公証役場で作成する。公証人が本人に対し遺言内容について質問し、その後、原案の内容を全員で確認する。間違いなければ本人、証人2名、公証人がそれぞれ署名、押印し公正証書遺言が完成する。
- 費用が高額になることが欠点といえる。
新しい制度が発足
2020年7月に「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。
自筆証書遺言書保管制度を利用する手順は簡単です。
- 誰に何を相続させるか具体的に自筆で書く。必ず全文を自書し押印することと日付と氏名の記載が必要。
- 財産目録を作成する。パソコンで作成可能となった
- 法務局に電話で予約し、本人が出頭して申請する。申請書類に記入し、住民票の写しとマイナンバーカード等の本人確認書類を提出、提示する。
- 複数の法務局職員が遺言内容を点検し、記載漏れや基本的なルールに反していないかをチェックし、問題なければ申請を受理し、保管証が交付される。
この制度で従来の自筆証書遺言の弱点はすべて解消されました。
家庭裁判所の検認とは、自筆証書遺言が発見された時に、その遺言書が基本的なルールに照らして有効か否かを家庭裁判所が確認する手続です。相続人の一人が申立てを行い、家庭裁判所から検認期日を指定されるのでその日に相続人が出頭する(申立人以外の相続人は出頭するか自身で判断)。検認の結果、有効と判断されれば検認済証明書を受領し、相続手続きを開始する。万一無効と判断されれば、相続人間で遺産分割協議を行わなければなりません。保管制度を利用することでこの検認が不要になったことはおおきなメリットといえます。
公正証書遺言のメモを作ることと自筆証書遺言書保管制度の相続内容を自筆で書くことはほとんど同じことを行っています。
必要書類も自筆証書遺言書保管制度の方が少ないし、手軽に手配できるものです。
法務局で保管されるので、紛失や改ざんの恐れが無くなった。法務局職員が受付の際に外形的な確認(全文や日付氏名を自書しているか、押印はあるか)をするので、家庭裁判所の検認も不要となった。本人が死亡した際には、遺言書が保管されていることを相続人に通知してくれるので、遺言書が確実に相続人に伝えられる。
手続きには本人が法務局に出向く必要はある(公正証書遺言の場合公証人が病院等に出向いてくれることもある)が、公証役場に証人と共に出頭し、口述した内容を公証人に清書してもらい、その内容を証人と一緒に確認するといった手間と費用はなくなります。
さらに、財産目録を含めて全文自筆が定められていた法律が改正され、財産目録についてはパソコン等で作成しても良くなったことで、自筆証書遺言書を書きやすくなったこともあり、自筆証書遺言書を作成することが増えているのが実情です。
実際に法務局で申請してみると、職員が優しく丁寧に説明してくれ、内容点検を複数の職員で行うのに、1時間程度待っただけで終わりました。費用は証紙代3900円だけでした。
遺言内容を変更したくなったら新しく作成すればよいのです。以前のものは無効となるので取り消し等余計な手間はかかりません。新たな遺言は公正証書遺言にすることも可能です。
弱点が解消された自筆証書遺言保管制度を利用して、遺言書を書くことをお勧めします。